【日语共读】女生徒(3)

  亲爱的小伙伴们,大家晚上好,今天由小野主播继续为我们带来《女生徒》~ では、はじめましょう!


太宰治---《女生徒》


3

    けさから五月、そう思うと、なんだか少し浮き浮きして来た。やっぱり嬉(うれ)しい。もう夏も近いと思う。庭に出ると苺(いちご)の花が目にとまる。お父さんの死んだという事実が、不思議になる。死んで、いなくなる、ということは、理解できにくいことだ。腑(ふ)に落ちない。お姉さんや、別れた人や、長いあいだ逢わずにいる人たちが懐(なつ)かしい。どうも朝は、過ぎ去ったこと、もうせんの人たちの事が、いやに身近に、おタクワンの臭(にお)いのように味気(あじき)なく思い出されて、かなわない。

    从今天开始就是五月了,一想到此,心里多少有些雀跃。很开心,因为夏天就快要到了。步入庭院,草莓花映入眼帘,父亲去世的事实,变得很不可思议。死亡、去世这种事最讨厌,实在让人难以理解,叫人纳闷。好想念姐姐、分开的朋友,还有好久不见的人。这些过去的事、前人的事,就像臭腌菜般环绕在我周遭,真是受不了。


 ジャピイと、カア(可哀想(かわいそう)な犬だから、カアと呼ぶんだ)と、二匹もつれ合いながら、走って来た。二匹をまえに並べて置いて、ジャピイだけを、うんと可愛がってやった。ジャピイの真白い毛は光って美しい。カアは、きたない。ジャピイを可愛がっていると、カアは、傍で泣きそうな顔をしているのをちゃんと知っている。カアが片輪だということも知っている。カアは、悲しくて、いやだ。可哀想で可哀想でたまらないから、わざと意地悪くしてやるのだ。

    恰皮、卡儿(因为是可怜的狗狗,所以叫它卡儿),两只狗一齐跑过来,并坐在我跟前。我只喜欢恰皮,恰皮的白毛光亮亮地很美,而卡儿却脏兮兮的。我在抚摸恰皮时,清楚地看到卡儿在一旁哭泣的表情。我也知道卡儿只有一条腿,但我就是不喜欢它那副悲伤的样子,就是可怜得让人受不了,所以我才故意不对它好。


    カアは、野良犬みたいに見えるから、いつ犬殺しにやられるか、わからない。カアは、足が、こんなだから、逃げるのに、おそいことだろう。カア、早く、山の中にでも行きなさい。おまえは誰にも可愛がられないのだから、早く死ねばいい。私は、カアだけでなく、人にもいけないことをする子なんだ。人を困らせて、刺戟する。ほんとうに厭な子なんだ。縁側に腰かけて、ジャピイの頭を撫(な)でてやりながら、目に浸(し)みる青葉を見ていると、情なくなって、土(つち)の上に坐りたいような気持になった。

    卡儿看来好像只野狗,什么时候会被抓去杀掉都很难说,它的脚都已经这样了,就算要逃,也跑不快吧!卡儿,请赶快到深山里去,因为谁都不喜欢你,还是早早去死吧!不仅是对卡儿,对人我也会做出恶劣的事,欺负别人、伤害别人。我实在是个惹人厌的小孩,坐在走廊上抚摸着恰皮的头,看到映入眼帘的绿叶,突然感到一阵难为情,好想坐在土地上。


 泣いてみたくなった。うんと息(いき)をつめて、目を充血させると、少し涙が出るかも知れないと思って、やってみたが、だめだった。もう、涙のない女になったのかも知れない。

    我试着想哭泣。屏住气息,让眼睛充血,也许会流下一点泪来。我试着这样做,但还是没办法,也许我已经变成个没有眼泪的女人。


 あきらめて、お部屋の掃除をはじめる。お掃除しながら、ふと「唐人(とうじん)お吉(きち)」を唄う。ちょっとあたりを見廻したような感じ。普段、モオツァルトだの、バッハだのに熱中しているはずの自分が、無意識に、「唐人お吉」を唄ったのが、面白い。蒲団を持ち上げるとき、よいしょ、と言ったり、お掃除しながら、唐人お吉を唄うようでは、自分も、もう、だめかと思う。こんなことでは、寝言などで、どんなに下品なこと言い出すか、不安でならない。でも、なんだか可笑しくなって、箒(ほうき)の手を休めて、ひとりで笑う。

    算了。我开始打扫屋子,边扫边哼起《唐人阿吉》,稍回过神,惊讶于平常热衷于莫扎特、巴哈的我,居然也会无意识地哼唱《唐人阿吉》,这很有趣。拿起棉被时吆喝着嘿咻,打扫时唱着《唐人阿吉》,自己该不会已经变得非常糟糕了吧?再这样下去,不知道会说出怎样下流的梦话?我感到非常不安。不过又莫名地觉得很可笑,于是停下拿着扫帚的手,一个人笑了起来。



本期主播

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