《挪威的森林》(9)

この寮の唯一の問題点はその根本的なうさん臭さにあった。寮はあるきわめて右翼的な人物を中心とする正体不明の財団法人によって運営されており、その運営方針は――もちろん僕の目から見ればということだが――かなり奇妙に歪んだものだった。入寮案内のパンフレットと寮生規則を読めばそのだいたいのところはわかる。

整个学生宿舍只有一个基本的疑点。它的经营者是一个以某极右派人士为中心的财团法人,而它的经营方针这自然是我个人主观的看法扭曲得相当蹊跷。你只要翻翻住宿手册和宿舍条规就能知道个大概了。

「教育の根幹を窮め国家にとって有為な人材の育成につとめる」、これがこの寮創設の精神であり、そしてその精神に賛同した多くの財界人が私財を投じ……というのが表向きの顔なのだが、その裏のことは例によって曖昧模糊としている。正確なところは誰にもわからない。ただの税金対策だと言うものもいるし、売名行為だと言うものもいるし、寮設立という名目でこの一等地を詐欺同然のやりくちで手に入れたんだと言うものもいる。いや、もっともっと深い読みがあるんだと言うものもいる。彼の説によればこの寮の出身者で政財界に地下の閥を作ろうというのが設立者の目的なのだということであった。

“教育的基本方针在于为国家培育有用的人才”,这是宿舍的始创本意。许多财界人士表面上是出于赞同才捐出个人财产,但实际上的用意则暧昧模糊,和这社会上的其他团体没有两样。没有人知道他们真正的目的。有人说这只是单纯的避税对策,也有人说是一种沽名钓誉的行为,更有人说他们是藉口盖宿舍,目的只是想把这块一等土地以类似诈欺的方式弄到手而已。

たしかに寮には寮生の中のトップエリートをあつめた特権的なクラブのようなものがあって、僕もくわしいことはよく知らないけれど、月に何度かその設立者をまじえて研究会のようなものを開いており、そのクラブに入っている限り就職の心配はないということであった。そんな説のいったいどれが正しくてどれが間違っているのか僕には判断できないが、それらの説は「とにかくここはうさん臭いんだ」という点で共通していた。

不过,事实上宿舍里确实有个特权集团,专门吸收住宿生中的佼佼者为团员。详细的情形我虽不很清楚,但我知道他们每个月都要召开好几次的研究会,经营者也参与其中。听说只要加入为团员,将来便不愁没有工作。众说纷云,我实在也无法判断究竟孰是孰非,但这些说法有一个共通点,即“反正这鬼地方是有些蹊跷的”。

 いずれにせよ一九六八年の春から七〇年の春までの二年間を僕はこのうさん臭い寮で過した。どうしてそんなうさん臭いところに二年もいたのだと訊かれても答えようがない。日常生活というレベルから見れば右翼だろうが左翼だろうが、偽善だろうが偽悪だろうが、それほどたいした違いはないのだ。

尽管如此,从一九六八年春到七Ο年春的两年,我就都在这个“有些蹊跷”的宿舍度过。要是有人问我,为什么能在这种“蹊跷”的地方过了整整两年,我也答不上来。如果只是过过单纯的日常生活的话,管他是右派也好,左派也好,是伪善也好,伪恶也罢,对我来说根本没有什么差别。

寮の一日は荘厳な国旗掲揚とともに始まる。もちろん国歌も流れるし スポーツニュースからマーチが切り離せないように、国旗掲揚から国歌は切り離せない。国旗掲揚台は中庭のまん中にあってどの寮棟の窓からも見えるようになっている。

每天一早,庄严的升旗典礼便揭开一整天宿舍生活的序幕。当然也播放国歌。就好比说进行曲离不开体育报导一样,国歌自然也离不开升旗典礼。升旗台就安置在院子的正中央,不管从那一栋的宿舍窗口都看得见。

国旗を掲揚するのは東棟(僕の入っている寮だ)の寮長の役目だった。背が高くて目つきの鋭い六十前後の男だ。いかにも硬そうな髪にいくらか白髪がまじり、日焼けした首筋に長い傷あとがある。この人物は陸軍中野学校の出身という話だったが、これも真偽のほどはわからない。そのとなりにはこの国旗掲揚を手伝う助手の如き立場の学生が控えている。この学生のことは誰もよく知らない。丸刈りで、いつも学生服を着ている。名前も知らないし、どの部屋に住んでいるのかもわからない。

主持升旗典礼的是东宿舍(我住的宿舍)的舍监。他长得高头大马,目光锐利,年纪约在六十岁左右。满头怒发混杂着几许白发,晒黑了的脖子上有道长长的伤痕。听说他是陆军中野学校出身,但不知是真是假。在他身边有个仿佛是升旗帮手的学生,没有人知道这个学生的来历。他理了个小平头,老是穿着学生制服,也不知道他姓啥叫啥,住哪个房间。

食堂でも風呂でも一度も顔をあわせたことがない。本当に学生なのかどうかさえわからない。まあしかし学生服を着ているからにはやはり学生なのだろう。そうとしか考えようがない。そして中野学校氏とは逆に背が低く、小太りで色が白い。この不気味きわまりない二人組が毎朝六時に寮の中庭に日の丸をあげるわけだ。

我从不曾在餐厅或澡堂里遇过他,是否真是学生也不知道。不过因为他总是穿着学生制服,想来大概是学生吧。否则实在也猜不出来会是什么人。和“中野学校”先生不同,他长得矮矮胖胖,肤色白皙。就是这么一对宝,每天早上六点准时在宿舍的院子里升旗。


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