冬の月に誘われて

冬の月は季節はずれで、見上げる人もないと徒然草にある。確かに月見といえば秋。もっとも 兼好法師 はこうも書く。「もののあはれは秋」と人はいうけれど、冬の景色もまた決して秋に劣らない、と▼先日の クリスマス はどうだったろうか。今年最後の満月となった。25日の夜に満月が見られたのは実に38年ぶりという。次回 ログイン前の続き は2034年というから貴重だった。季節はずれなどと背を向けず、天空を仰ぎ見た方も多かっただろう▼当方あいにく機を逸したので、一日遅れの対面を試みた。凜(りん)として美しかった。満月だけを見ればいいというものではないとは、これまた徒然草の名高い一節。李白の「静夜思(せいやし)」も浮かぶ。寝台の前にさす月光を見て、地上におりた霜かと疑う名詩だ▼寒月に誘われ、『月の魔力』という、やや古い本を手に取った。米国の医学博士の研究で、潮の干満を起こす月の引力が人の行動や感情にも影響するという。例えば満月の頃は人の攻撃性が増し、暴行事件が多発する。本当なら驚きだ▼逆に半月の頃は緊張が解け、不注意による交通事故が多いという分析が日本にあるとも聞く。新月、三日月、上弦の月……。満ち欠けに連れ、謎めいた何らかの力を地上に及ぼしているのだろうか▼月への視線は様々だ。大きすぎ熱すぎる太陽に比べ、月は何とつつましく清冽(せいれつ)で懐かしいか。編集工学者の松岡正剛(せいごう)さんはそう見立て、月を擁護する。「太陽は野暮(やぼ)、月は粋」と。凍(い)てつく夜空にかかる月はまさに粋だ。

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