4.PDの職務とCPSとの分業

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ここまで見てきたように, 本来 CPS は製品競争力に関わる部分について責任を負っており,プロジェクト運営と収益の部分については, PD が担当するということであった(運営の実態は多少異なるとしても) 。 PD は,セグメントごとに 1 名ずつ存在し,基本的な役割は,車および企業が市場において,どのようにブランドを形成しているかを基盤に,顧客に受け入れられる商品作り,収益を確保するというものが前提である。今回のヒアリングにおいては,商品主管の経験のDPD(Deputy Program Director:次席 PD) に話を聞くことが出来た。まず,商品主管との職務内容の違いについて,以下のように述べられている。

「商品主管では,担当車種に関する全てのことを視野に入れながら,バランスを取っていかなければなりませんでしたが, PD では収益が第一であるとされています。ただし,単に収益第一だと,商品に問題が出る場合もありますから,お客様を念頭に置いて,どこが限界かというのを見て,あるときは商品を強化する,場合によっては,『これもう少しこうした方がいいんじゃないか,そのためのお金はあげるよ』とか,『ここはお金を使い過ぎだから,少し返してよ』ということを CPS に言ったりして,調整をするということです。 CPS が立てた目標に対して, PD が予算を割り付けます。その両方のタスクをうまく達成させるのが CVE で, PD が割り付けた原価の中で,最適な解を求めることになります。 CPS と PD が『1万円でこの性能を達成してくれ』と言ってきたら,それを CVE が知恵を絞って開発するということです。以前なら商品主管は, 『1 万円でなぜできないのか聞かせてくれ』とやっていましたが,今は『頼むよ』という一言で, CVE がそれを全権委任でやります。」

このように PD は,基本的にはある車種の収益の部分について責任を負いつつ,セグメント内での開発費や原価の調整を行っている。また,以前は商品主管も行っていた,製造部門や購買部門との調整についても, PD が行っている。

「PD は,商品がうまく育っていこうとするときに,どこから資金を捻り出してあげればいいんだろうというところで苦労していると思います。例えば,『販売台数を増やしてくれ』と営業部門に言う,販売価格を上げるか,それは実際には難しいので,ディーラーに卸す価格やディーラーのマージンを調整する,あとは購買部門に『もう少し安く買ってきてくれ』と言う,製造部門に『もう少し効率をよくして値段を下げられないか』と言う,開発部門に『部品を共有化して原価を下げられないか』と言うなど,あちこちつつくところはたくさんあります。

このことは, CPS が製品競争力強化に没頭しやすい体制を, PD がサポートしていると考えられよう。その点については,以下のように述べられている。

「CPSが車のことを中心に考えるということが, 良くなった点ではないかと私は思っています。

例えば,私が商品主管をやっていた時は,ある部品を付けるにしても,収益の問題をどうしようかと悩んでいましたが,今は CPS が『商品力の点からこれが欲しい』と,高らかに宣言するわけです。それに PD が納得すると,それ以外のところで一生懸命調整をしてあげる。そちらの方で力を出してあげるということは, CPS のバックアップになるし,商品も良くなるという気がします。それは多分商品主管1人では出来ないものを, PD が成り代わって資金を稼いで,バックアップするというような体制になりましたので,責任が明確になった,分業が明確になったということではないかと思います。」

またPD は商品主管の経験があるため, CPS との調整がスムーズに進みやすいとも述べている。

「『これを付けたい』という気持ちは分かります。自分でもなるほどそうだろうなと思うと,いちいち論議しなくても,それはそうだよねと納得して仕事を進められます」

このように,従来商品主管が行っていた職務は,主に CPS と PD によって分業されているように思われる。新体制では,製品競争力を高めるという部分が特に強調されており,その部分を担うのが CPS であるとされている。 PD はそれ以外の部分について,製品競争力強化のためのサポートを行いつつ,収益を高めるための試みを行っているわけである。商品の魅力を高めることは,販売台数の増加に結びつき,企業収益の増加に大きく貢献することになろう。

しかし, PD は権限としては CPS などよりも若干離れた立場にいるようだが, CPS, CVE,CMM, PCD などは,基本的には「横並び」であるということであった。 PD が関わらない。

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