天声人语20150704

原文1:前評判の高いクラシックコンサートにも「外(はず)れ」はある。さる巨匠が来日したとき、出演料は高額だが演奏は出来が悪かった。それでもブラボーの声が響く中、ひとり「ベラボー、ドロボー」と叫んだ知人がいたと、かつて作家の三浦朱門さんが本紙寄稿の随筆に書いていた

原文2:さて、こちらはどのかけ声だろう。迷走の末、総工費が2520億円に膨らんだ東京五輪の主会場、新国立競技場のことだ。高額負担を求められている東京都の舛添要一知事は「べらぼうに高くなった」と苦い顔だ

原文3:3年前のロンドン五輪の主会場が四つ造れる額と聞けば誰でも驚く。しかも実際はそれで収まらないとの見方がもっぱらだ。あきれたどんぶり勘定に「税金ドロボー」と叫べば言葉が過ぎようか。ブラボーの声はついぞ聞こえてこない

原文4:いったん白紙に戻せばと思うが、メンツが邪魔をしているらしい。五輪招致の際、この主会場の案が評価されたといい、文科省などは固執する。このままでは高い面目代(めんぼくだい)になるのは避けられない

原文5:長野冬季五輪の金メダリスト清水宏保さんが、「メイン競技場は簡素でいいと思う」と言っていた。観衆もそうだろう。スタジアムを見て感涙にむせぶ人は珍しい。感動は入れ物ではなく、アスリートによってもたらされる

原文6:めでたい日に晴れ着を新調してやりたい親心。それに似た関係者の気持ちは分からなくもないが、身の丈を超えたベラボーな出費で仕立てても人は喜ぶまい。考え直す時間はまだあるはずだ。

你可能感兴趣的:(天声人语20150704)