2組の皆さん、ご卒業おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。
皆さんとお別れしてから2年が経つのですね。早いですね。
皆さんは日本語を日本語だけで習うといういわゆる直接法で学んだ第1期生です。私たちにとっても初めてのことだったので、そのための準備を夏休み前から始めました。何度も何度も会議を繰り返し、指導法の確認や教科書選定、絵カードや教材作りにと明け暮れました。
そして授業開始の前にはあの最上階の教室を念入りに掃除し、机、椅子をコの字に並べ、貼り紙その他で教室環境を整えて皆さんを迎えたのが、昨日のことのように思い出されます。
授業当初は皆さんも緊張していたでしょうが、私も「果たして日本語だけでの授業は受け入れられるのかしら?」と心配でした。
覚えていますか? 「あいうえお…」の50音を発音はもちろんのこときれいに書く練習を何度も何度もしましたよね。その字の丁寧できれいだったこと。私の自慢でした。挨拶言葉から始まり身近な単語を少しずつ覚え、そして文法、会話、聴解、作文等々へ進みましたね。皆さんも必死なら私も魏来先生も必死でした。
カリキュラムがきつくて時々弱音を吐いた学生もいましたよね。中には授業について行けなくておいて行かれた学生もいました。そんな中、時間外の居残り授業は充実していたと思いませんか? それでまたやる気になってくれた学生が出たのはとても嬉しかったです。
そうそう「だ体」を習ってからは日記を書きましたね。そのやり取りの中で少しずつあなた方のことがわかって来ました。私にとっても貴重な日記でした。
2年生になってからはますます難しくなって行きましたが、楽しい授業だってあったでしょ?「擬声語・擬態語」の授業では私の「迷演技」に爆笑してくれましたね。またその年の冬には腕を骨折してしまい、右手で字を書くのが出来なくて、左手で書いたつたない字でも「大丈夫、大丈夫」と言って優しく受け入れてくれました。
個性あふれるメンバーが班長の刘さんを中心に心地よい雰囲気のいいクラスを作っていました。あなた達を思い出す時、決まってやさしく暖かい気持ちになります。
日本人の先生も中国人の先生も学生のためになることは何だろうと知恵を絞り積極的に取り入れました。初めての各大学の学生が集まっての交流会では自分たちが思っていた以上に日本語で話せることを実感しましたね。そして、「先生、とても楽しかったです。自信になりました」と目を輝かせて話してくれましたね。
文化祭も思い出深いです。各クラスの発表、能と謡の発表、着物の着付けに展示、そして合唱などがありましたが、練習の時も準備の時も当日の発表の時も嫌な顔一つしないで参加していたのが印象的です。
私が去った後はそれ以上に素晴らしい文化祭を作り上げたことと思います。それらはすべて伝統となって今後も続いて行くのです。あなた方はそういう意味でも先駆者です。
こうして書いていると、あとからあとからあの日々が思い出されます。皆さんは、お別れしてからの2年でどんなに成長したことでしょう。お会いして実感したかったです。
私はあなた達に出会ってこの上ない幸せをいただきました。
あなた達との絆は確かに結ばれています。たとえ離れていてもそしてたとえ一生会えないとしても結ばれた絆がなくなることはないのです。私の心の中にしっかりと根付いています。そして時々心の宝箱から思い出をそっと取り出して懐かしんでいます。
未知の地だった「哈爾滨」は今では私にとっては大切な地です。そこには皆さんと共に過ごした時間があり、優しい心があるからです。ありがとうございました。
大学で培った力や育んだ心を今後は社会で生かしてください。そして少しでも日本語と日本人とつながってくれたらこの上ない幸せです。
これからの皆さんの行く道に幸多きことを心よりお祈り申し上げます。
北海道江別市 中森志美