2020-03-01

新型コロナウイルスで臨時休校、親の悩み解決に知恵絞る企業

2020年2月28日

全2635文字

(写真:PIXTA)

 安倍晋三首相は2月27日の新型コロナウイルス感染症対策本部で、全国の小中学校と高校、特別支援学校に臨時休校を要請する考えを表明した。期間は3月2日から春休みまで。幼稚園や保育所、学童保育は対象から外した。

 安倍首相は「ここ1~2週間が極めて重要」だとして、26日の「イベント自粛」に続いて、異例の要請に踏み切った。しかし、ネット上などでは安倍首相の発表直後から、要請に困惑する声が相次いでいる。

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 「卒業式も中止が発表されたばかりなのに、今度は臨時休校。小学校6年生の娘は突然、今日が最終登校日になってしまった。娘の気持ちを考えるとかわいそうでならない」「来週から本当に働けるのだろうか」「学童は開いてくれそうだが、1カ月以上、毎日お弁当を作らなければならないのは辛すぎる」「3月休んだ分、来年度の夏休みは潰れるのではないだろうか」

 休校要請の直後から、ツイッターやフェイスブックでは子どもを持つ働く親の悲痛な叫びで埋め尽くされた。今や共働き世帯が夫もしくは妻のみが働く世帯を上回るご時世。1カ月以上子どもの学校が休みとなると、対応に困る世帯が多いのもうなずける。

 安倍首相は「民間企業は休みがとりやすくなる環境を整え、子どもを持つ保護者に配慮してほしい」と呼びかけた。「ただでさえ人手不足のご時世に『配慮』だけで休めるとでも思っているのだろうか。『休ませなさい』と言うくらい、強い表現で言ってほしかった」。週3回、子どもが学校に行っている時間にスーパーでパートをしている、小学校2年生の子供を持つ40歳代の主婦は憤りを隠せない。当然、子どもが休みになれば仕事は休まざるを得ないため、収入も減る。生活面も不安だ。

 日本経済新聞が主要企業を対象に実施し、136社から回答を得た緊急調査では、在宅勤務を実施している企業は全体の46%。半分にも満たない。飲食店や物販といったサービス業、医療・介護関係などテレワークできない職種は意外と多い。北海道帯広市の帯広厚生病院では、臨時休校の影響で出勤できなくなる看護師が全体の2割強に上り、外来を休診したケースもある。こうした問題の影響をどれだけ考えて首相は決断したのだろうか。

 東京都文京区のスーパーマーケットの店員は「ここ1週間でテレワークする人が増えたせいか、品物の売れ行きスピードが速い。自宅で過ごす時間が増えた分、消費量が増えているのだろう。学校が休みになったらどうなるか。調達が不安だ」と話す。また、同区でパーソナルトレーニングジムを営む吉田尚弘さんは『来週から子供たちが長期で休むとなると、主婦の方中心に、平日昼間に来られないお客様が出てくるかもしれない』と懸念する。

 臨時休校により、学校という「インフラ」が機能不全になった影響は、広い範囲に波及しそうだ。突然現れた課題を解決するために企業も動き出している。

新型コロナウイルスで臨時休校、親の悩み解決に知恵絞る企業

2020年2月28日

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ベアーズのホームページはアクセスが約2倍に

 学習塾の運営などを手掛ける学研ホールディングスは来週以降、全国で1万6000カ所ある「学研教室」での学習を自宅でできるように切り替える方針だ。まとまった量の教材を渡し、自宅で勉強してもらい、指導者宅に郵送やポスト投函(とうかん)などの手段で返して、指導者が添削して生徒に戻す。インフルエンザの流行による休校の際などに採っている手法を広げる。3月2日以降、教育コンテンツを無償で提供することも検討している。

 キッズシッターなどのサービスを手掛ける家事代行のベアーズ(東京・中央)。政府による休校要請のニュースが伝わった27日夜以降、同社ホームページへのアクセスは急増。通常の2倍程度になっているという。サービス料金などに関する問い合わせも多い。

 共働き家庭への派遣需要が高まるとみて、同社はスタッフの確保を急いでいる。1万6000人いるスタッフのうち、シッター研修をまだ受けていない人への研修を増やすほか、社内の託児サービスを拡充する。

 その一方で、ベアーズには「パートを休むことにしたので、今頼んでいる家事代行サービスを停止したい」などの申請もあるという。子どもの学校が休校になったことに伴い、仕事を休む人が増えると、店舗運営をパート従業員に頼るスーパーなどにも影響が及ぶ。

 食品スーパー大手のライフコーポレーションは28日午前、店舗運営など各本部の担当者や役員による対策会議を開いた。休校の影響による欠員がどのくらいになるのかを週末にかけて確認したうえで、本部から応援に行ったり、営業時間を短縮したりすることなどを検討する。埼玉県が地盤のヤオコーも「まずは欠員がどのくらい出そうか確認している」とする。

 そのほかにも、派遣大手のパソナグループは小学生の子どもを持つ従業員向けにオフィスを開放することを決定した。東京・大手町にある子どもを預けられるスペース付きのカフェで、従業員が子どもを見守りながら働けるようにする。また、オフィススペースの部屋に子どもが遊べるおもちゃなどを用意して、小学生が過ごせる場所にするという。

 パソナグループの広報は「どれくらい従業員からのニーズがあるかは読めないが、安心して働ける環境づくりに必要だと判断した。東京・大手町の本部ビルから始めて、支店にも広げられれば」と話す。

 さらに、パソナグループの正社員や、派遣先で働く派遣スタッフがそれぞれ使えるインターネット掲示板を作り、近くに住む人同士で子どもを預け合う相談ができるようにする。例えば、休みを取った従業員が自分の子どもと一緒に同僚の子どもを世話するための調整をするといった利用を想定している。

 自宅にいる子どもの食事の問題を解決しようと動いたのがワタミ。同社は28日、小中学生と高校生を対象に3月9日から4月3日までの間、通常5日分2900円(税込み)と3080円(同)で販売している夕食用の宅配弁当を1000円(同)で提供すると発表した。

 突然の休校要請は、子どもを持つ親の生活にも大きな変更を強いることになる。その影響は企業にも様々な形で降りかかってくるのは間違いない。

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