【日语共读】《心》夏目漱石(144)


       《心》讲述的是“先生”结识并爱上了房东家的小姐,同时也赢得了房东太太的好感,但却因年少时曾受到叔父的欺诈而对他人时存戒心,迟迟不能表白自己的心意。后来,“先生”的好友K住进了房东家里,也爱上了小姐,直率的K向好友“先生"表白了自己的心事,“先生”在表面上批评K“不求上进”,背地里却偷偷地向房东太太提出要和小姐结婚。知道了这一切真相之后的K在绝望中自杀了,同时K的死也留给“先生”一生的不安和自责,婚后的“先生”一直无法忘却K,他的内心无比的寂寞,终于也走上了自杀的道路

    さっきまで傍(そば)にいて、あんまりだわとか何とかいって笑ったお嬢さんは、いつの間にか向うの隅に行って、背中をこっちへ向けていました。私は立とうとして振り返った時、その後姿(うしろすがた)を見たのです。後姿だけで人間の心が読めるはずはありません。お嬢さんがこの問題についてどう考えているか、私には見当が付きませんでした。お嬢さんは戸棚を前にして坐(すわ)っていました。その戸棚の一尺(しゃく)ばかり開(あ)いている隙間(すきま)から、お嬢さんは何か引き出して膝(ひざ)の上へ置いて眺(なが)めているらしかったのです。私の眼はその隙間の端(はじ)に、一昨日(おととい)買った反物(たんもの)を見付け出しました。私の着物もお嬢さんのも同じ戸棚の隅に重ねてあったのです。


  刚才一直坐在一旁的小姐,还笑着说太过分了什么的呢,不知什么时候,已躲在对面的角落里,背向着我们了。我回过身子要走时,正看见她的背影。只看背影是不会得知一个人的内心的。我猜不出她对这个问题是怎么想的。她坐在橱柜前,从打开一尺多宽的柜门里好象取出什么东西,正放在膝上看着。在那打开的橱柜里,我看见了前天买的衣料。我的衣服和小姐的一同叠放在里面的角落里。


 私が何ともいわずに席を立ち掛けると、奥さんは急に改まった調子になって、私にどう思うかと聞くのです。その聞き方は何をどう思うのかと反問しなければ解(わか)らないほど不意でした。それがお嬢さんを早く片付けた方が得策だろうかという意味だと判然(はっきり)した時、私はなるべく緩(ゆっ)くらな方がいいだろうと答えました。奥さんは自分もそう思うといいました。


  我什么都没说,正要起身时,夫人忽然变换了语调,问我是怎么想的。怎么想的什么呢?她问得那样突然,仿佛不反问一句便不会明白。当我弄清她的意思是让小姐早点出嫁是否妥善时,我答道,还是尽量缓些好。她说她也是这个意思。


 奥さんとお嬢さんと私の関係がこうなっている所へ、もう一人男が入(い)り込まなければならない事になりました。その男がこの家庭の一員となった結果は、私の運命に非常な変化を来(きた)しています。もしその男が私の生活の行路(こうろ)を横切らなかったならば、おそらくこういう長いものをあなたに書き残す必要も起らなかったでしょう。私は手もなく、魔の通る前に立って、その瞬間の影に一生を薄暗くされて気が付かずにいたのと同じ事です。自白すると、私は自分でその男を宅(うち)へ引張(ひっぱ)って来たのです。無論奥さんの許諾(きょだく)も必要ですから、私は最初何もかも隠さず打ち明けて、奥さんに頼んだのです。ところが奥さんは止(よ)せといいました。私には連れて来なければ済まない事情が充分あるのに、止せという奥さんの方には、筋の立った理屈はまるでなかったのです。だから私は私の善(い)いと思うところを強(し)いて断行してしまいました。


    正当夫人、小姐和我的关系到了这种地步的时候,竟变成了另一个人注定地走了进来的局面。他成为这个家庭一员的结果,给我的命运带来了巨大的变化。倘若没有他在我的生活道路上,恐怕也没有必要为你写下这封长信了。我束手无策地站着让魔鬼在面前通过,简直就象没有发现那瞬间的掠影将使我的一生变得暗淡。老实说,是我自己把他拉到家里来的。当然这必须要有夫人的同意才行,所以我一开始就毫不隐瞒地对夫人说了。但是,她不同意。尽管我认为带他来的理由很充分,可在夫人看来,那简直不能成为理由。因此,我只好硬按着自以为是的善意,断然地做了。

 


主播介绍

本期主播:晋助

本期编辑:LMN     

责任编辑:日语之声

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